28才の初恋
 次のお風呂に入る前に、丁寧に身体をゴシゴシと洗った。

 銭湯のアメニティであるタオルが見るも無惨なほどに黒くなってしまったことは……私の胸の奥にそっとしまっておこう。
 ボロ雑巾と化したタオルを目立たない場所にそっと捨てて、新しいタオルを棚からそっと貰う。

――さて、次のお風呂だ。
  
 今度は『バラ風呂』である。

 大浴場よりは狭い浴槽であるが、それでも充分に広い大理石で出来た浴槽。
 その中に、ところ狭しとバラの花が浮かべられている。
 浴室内にフンワリと漂うバラの香りが何ともいえず心地良い。

 喜び勇んでバラ風呂に浸かる。

 これだけ広くて、誰も見ていないなら――。
 テンションも上がっていたし……浴槽の中で泳いでみた、犬かきで。

――気持ちイイーーっ!!

 泳いでる私の耳に、隣の大浴場からざわめきが聞こえたような気がするけど……。
 私とは関係ない。きっとない!!
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