28才の初恋
「そうですね、帰ったらビールでも飲んで寝るくらいですかね」

 大樹クンのその言葉に、私が反応する。
 話し相手の磯野は「ハハ、そうだな」なんて軽く流してしまってやがる。

――これは……誘うべきか!?

 悩んでいる間にも、大樹クンを含めた課のみんなは帰り支度を始めている。
 外は雨も降っているし、早々に帰ろうか、といった雰囲気である。
 私もこの天候の中でお出かけしたいとは思わない、家に帰ればきーちゃんも待っているだろうし。
 しかし、しかし……だ。

――大樹クンが一緒となれば話は別だ!!

 悩んでいる間にも時間は過ぎる。
 早くしないと、大樹クンも帰ってしまう。
 急げ……急いで何か言うんだ!

「び、びあがーでんとか……どうかな!?」

――脈絡もなく、いきなり切り出してしまった
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