28才の初恋
「池田クンってさー、そういえば彼女とかはいないの?」

 二人きりの酒宴が佳境に入った頃、思い切って話を切り出してみた。
 ちょっとズルい考えかもしれないが、酒が入っていれば多少は許されるかな……と。

 大樹クンに彼女がいない、ということは以前の会話から知っている。
 しかし、やはり本人の口からしっかりと聞いてみたい、そんな思いである。

 さらに言えば、
 『彼女はいないんですよー』
 『そうなんだ、じゃあ私なんてどう?』
 みたいな会話の流れになってくれないかな、なんて淡い期待もある。

――まあ、それは絶対に無いのが分かっているのが悔しいところではあるが。

「えっ? 彼女……ですか?」

――あれ?

 返答が……何か重たい?
 ひょっとして……私ってば地雷を踏んだ?
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