28才の初恋

「う、ううん。わ、私の方こそゴメンね……何だか無神経なこと聞いちゃったみたいで」

　大樹クンの言葉に、とりあえず謝ってみる。
　思わず黙ってしまうほどの過去――興味は津々なのだけれど、ちょっと自分から聞きだせるような雰囲気ではない。
　これから大樹クンから話してくれるようなら喜んで聞くが、これでこの話はオシマイ、というのならばそれで諦める。

　第一に、冷静になってみれば、だ。
　大樹クンの過去の彼女の話なんかを聞かされたとして、嫉妬しない自信などコレっぽっちも無い。
　
――確実に嫉妬する。

　初体験の話とかを聞かされたら、きっとその相手の電話番号を調べて無言電話とかをしかけてしまいそうだし。
　もしも、前の彼女にまだ未練がある、なんて話を聞いた日には……きっと翌日には刺客を差し向けてしまうだろう。
　そう考えれば――話を聞かなくて正解かもしれない。