28才の初恋
 そりゃあ、二十八年も生きていれば、人生も色々あるわけで。
 今の会社に就職してからは仕事一本で生きてきたので彼氏いない歴を更新していってはいるけど。
 それでも、学生時代に付き合った人の数は片手の指をオーバーする程度には居る。

 だけど、こんな気持ちになったことは一度も無かったし、付き合っていても……正直なところ相手にそれほどの興味は持っていなかった。

 相手が何をしていようが別に平気だったし、付き合う時も、別れる時も、全て『なんとなく』でやってきていたのだ。

 その付き合い方は、世間的に呼ぶならば『彼氏』だったのかもしれない。
 しかし、相手に対する私の感情は――『好き』ではあったかも知れないが『恋』とは呼べないことは――今、こうして大樹クンに抱く感情と比較することでよく分かっていた。

 こうして考えてみると、恋というヤツは楽しいけれど、非常に苦しい……厄介なものだ。
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