28才の初恋
 そして、次の瞬間――。
 私はさらに沈黙せざるを得なくなった。

 何と返せば良いか分からない、という状況は先ほどと同じである。
 だが、先ほどとは驚きのレベルが違う。
 大樹クンが続けた言葉は……私が予測できる範疇を軽く超えてしまっていて。
 その言葉の意外さに、思わず大声で「ええっ!!」と聞き返してしまったのだ。

 隣のマッチョなホモカップルも私の声に驚いてガン見をしてくるし。
 大樹クンは恥ずかしくなってしまったのか、ずっと下を向いたままになるし。

 しかし、本当にそれだけ驚かされたのだ。

 大樹クンが一つ秘密を告白して、私がそれに驚かされて……順番で言えば私から話しかけるべき状況なんだけど……なかなか声が出ない。かつ、何と声をかけるべきか。ベストな答えが思いつかない。
 まさか……大樹クンの口からこんな言葉が出るとは予想外だった。

「俺、これまで女の人と付き合ったことないんですよね」
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