28才の初恋
 看護婦さんもいなくなった救急の病室で、大樹クンと二人きり。
 まだ目を覚まさない大樹クンの顔を見ながら点滴をされていない方の手をキュッと握ってみる――。

 救急車に乗せられた時には、少し冷たくて私の心臓を止めそうになるほど冷たく感じられた身体が、点滴の効果だろうか、もう体温を取り戻しつつありほんのりと暖かい。

「ゴメンネ……」

 聞こえないだろうけど……大樹クンに小さく謝る。飲まなければやっていられないような気持ちにさせてしまった、そんな後悔で心の中を埋め尽くされる。

 でも、こうやって大樹クンの容態が元に戻って、心の底からホッとしている自分の気持ちに――本当に大樹クンのことが好きなのだと思い知らされる。

 まだ、目を閉じて眠っている大樹クン。
 眠っているうちに……キスしても……良いかな?
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