28才の初恋

6-8

「そうか、夢……か。だったら……」

 そう言いながら、一旦言葉を切った大樹クン。
 瞳を再び閉じながら、消え入りそうな声で言葉の続きを口にする。

「さっき『大樹クン』って、嬉しいな……俺も課長のこと……『きょう……ん』……て」

――な、何ですとー!!

 続きを聞きたいと思い、大樹クンの肩を揺すって起こしたい衝動を必死で抑える。
 それって、その言葉って……!!

 大樹クンは微笑んだままの表情で再び眠りについている。
 私は……その大樹クンの顔にキスすることを……何とか思い止まった。

 正々堂々と付き合って、ちゃんと同意の上でキスできる日まで我慢する、我慢できるよ!

 大樹クンの口から出た言葉……私の未来って……明るくない!?

「う……うおおおぉぉぉぉ!! 大樹クン! 結婚しようねええぇぇぇ!!」

 病室ということを忘れて、しかも大樹クンが傍で寝ているということも意識の外に吹っ飛んで、思いっきり叫んでしまった。

「病室ですよ!」

 その叫びを聞いて、看護婦さんが病室の中に入って来て……五分ほど怒られた。

――でも、幸せだ!!
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