28才の初恋
 それから十分の時間が過ぎて、小島が私に告げた通り、大樹クンは十五分遅れで待ち合わせ場所に到着した。

 私に「すいません、遅くなりました」と短く謝って、私が返事をする間もなく大樹クンはそのまま磯野や小島が会話している輪に入り込んでしまった。

――ちょ!やっぱり……避けられてるの!?

 これはヘコむ。
 マジでヘ・コ・む・わー!

 このまま旅行をキャンセルして、家に帰ってきーちゃんと戯れたいくらいにヘコむ。

 しかし、ヘコんでばかりはいられない。
 大樹クンを好きな一人の女ではあるが……その前に私はこの営業二課の課長なのだ。
 会社の行事として実施される社員旅行を、私の恋愛感情でサボるわけにはいかない。

 しかし、この調子で大樹クンに避けられ続けたら……この旅行中に私の精神が保たないのではないだろうか?
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