28才の初恋
――ちょ!どうしよう!?

 大樹クンのことにショックを受けて、ちょっと黄昏ている間に電車が出発してるよ!!

 この決定的な失敗に、やっと我に返った私が気が付いた瞬間――ポケットに入れておいた携帯が鳴り響いた!
 デニムのポケットから、慌てて携帯を取り出してスグに電話に出る。

 電話をかけてきた相手は――橋本だ。
 きっと電車の中から、なぜか駅のホームに突っ立っている私を発見して慌てて電話をかけたのだろう。
 声が思い切り震えている。

「も、もしもし……?」
『課長! どうして電車に乗ってないんですか!?』
「あ、あははは。乗り逃しちゃった」
『ええ!? 何かあったんですか?』

 橋本の言葉に、咄嗟に良い言い訳も見つからず。トイレに行ってしまっていたという嘘を吐く。
 うーん、最初から思わぬ失敗だ。
 
……非常に先行き不安な旅行になってしまった。
< 343 / 518 >

この作品をシェア

pagetop