28才の初恋
 うーん、しめ鯖とアンコの組み合わせはダメだ。これが旅の列車の中で得た結論である。

 目の前のカップルのイチャつき方も、私の胸焼けをさらに増進させてくれる。

 移動中、ひたすら大樹クンにくっつく予定だったので道中のヒマ潰し道具を持ってきていなかった。
 
――おかげでヒマで仕方ない。

 外の景色をいくら眺めても、ヒマを潰すには限度がある。
 私のヒマ潰しの道具は、自然と向かいのヒゲマッチョカップルの会話に聞き耳を立てることになってしまっていた。

 会話を聞いてみるに、このカップルは突き合って……いや、付き合ってからもう三年になるらしい。
 三年目にして、初めての温泉旅行なのだそうだ。
 普段はジムばかりで、角刈りのマッチョの方はやや不満だったらしい……なるほど、こっちが『受け』なのか。
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