28才の初恋
 駅前で食堂に入り、この土地の名物だという『湯葉カツ丼特盛』を注文する。
 名産の湯葉で衣を作ったカツ丼だそうで、特盛を注文したら店のおばちゃんが驚いた顔をしていた。
 ふと壁を見ると、『特盛を三十分で完食できた方、無料+記念品贈呈!!』という貼り紙がある。

――なるほど、そういうことか。

 おばちゃんの驚いた顔の意味にやっと納得が行った、と同時に少しホッとするような気持ちになる。
 三十分で完食ということは、大食いの人でも三十分以上はかかる量がある、ということだろう。
 ならば、私もこの食堂で三十分は時間を稼げるということだ。

 大樹クンに早く会いたいとは思うのだけど……やはり朝の駅での出来事を考えると――まだ顔を合わせるのが怖い。
 また避けられたらどうしよう……と。

 なので、少し考える時間を稼ぎたいのだ。
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