28才の初恋

7-5

 麓の食堂から、旅館までは車で十五分ほどの場所にあった。
 外観は和風で、落ち着いたような佇まいである。

 フロントで名前を告げて、部屋へと案内してもらう。
 部屋は二人で一室の利用だったようで、私は当然ながら小島と同じ部屋となった。

 到着した部屋の中には小島はおらず、部屋のテーブルには飲みかけのお茶と小島の旅行カバンだけが置かれている。
 中は十畳ほどの和室になっていて、部屋の奥には床の間がある。
 窓には障子が貼られていて、それなりに温泉宿の雰囲気が漂っている。

 旅行会社の担当者をとことんまで値切って、号泣までさせた割にはかなり良い部屋である。

 私のためにお茶を入れてくれた仲居さんが部屋を出て行った後、部屋の中の施設を確認する。
 押入れに、洋服かけ、床の間の横に置いてあるタンスの中にバスタオルと浴衣が一組。

 もう一組は小島が使っているのだろうか。
 一組しか残っていないということは、きっと今頃小島は温泉に入っているのだろう。
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