28才の初恋
 お風呂上りなのだろうか、大樹クンは浴衣を着ている。
 濡れた髪も色っぽいし、何だかシャンプーの良い香りも漂ってくる。

――ああ、これまでの禁断症状が一気に噴出してしまいそうだ。

 そんなことを思いながら、自分の口から零れそうになるヨダレを必死に抑える。
 まさか……こんな場所で会えるとは思っていなかった。
 完全に油断していた。

「課長、旅館に着いてたんですね」

 大樹クンも、まさかこの場で私に会うとは思っていなかったのだろう。
 何だか驚いたような表情である。

 しかし、この話し方……何だか、少しだけ飲み会以前の大樹クンに戻っているような。
 かなり嬉しさがこみ上げてくる。

 ああ、やっぱり旅行に来て良かった!
 
――この調子で、大樹クンとの関係を元に戻すぞ!!
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