28才の初恋
「すいません、じゃあ俺、着替えて来ますね」

 そう言いながら、店員さんから貰った替えの浴衣を持って自室に戻って行く大樹クン。
 私の鼻血を押さえる時に、返り血のように大樹クンの浴衣にもベッタリと血が付いていたのだ。

 ティッシュを持って来てくれた店員がそれに気が付いて、大樹クンに新たな浴衣を渡してくれた。

「うん、私も血が止まったらお風呂に行くから――」

 そう言って、大樹クンを見送る。
 せっかくマトモに話ができるようになっているので、かなり名残惜しい気持ちではあるけれど。
 それでもさすがに血塗れで歩き回らせるワケにもいかないし。

 大樹クンが去った後、鼻に詰まったティッシュを抜いてみる。
 血はあっさりと止まっている。
 
――本当に……素直な身体である。
< 364 / 518 >

この作品をシェア

pagetop