28才の初恋
 浴槽の中で百まで数える。
小島をすぐに追いかけた、とバレないようにするため……だけではない。
私のお風呂に入る時の習慣なのだ。

『お風呂から出るときは、百まで数えてから出ないとお腹の中にいる緑色のネバネバが出てきますよ』っておタネさんが言ってたもん。

 ちゃんと約束を守っているから緑のネバネバは出てきたことがないし。

――九十七……九十八……きゅうじゅうきゅう!!……百!!!!

 よし!すぐに小島を追いかけるぞ!!
 ザバっと風呂から上がり、脱衣所までダッシュだ!!
 脱衣所に居る小島は、既に浴衣を着て出口へ向かって歩いている。
 しまった、出遅れたか……!!

 さすがに、百まで数えたのがアダとなったか。小技を効かせて三の倍数が……という流行を意識したのが裏目に出てしまった。

 ともかく、急いで私も着替えて小島を追いかけないと!!
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