28才の初恋
 プレッシャーが良い方向に働いたのだろうか……?

『パシュッ!!』

 良い角度でスマッシュが入った。
 身体の力の乗り具合といい、これを取れる人間はまず居ないだろうというくらいの一発である。

 さすがの小島といえど、この球は拾えず。
 ボールは小島の背後の壁にめり込んだ。
 煙を上げた球の回転が壁で止まる――。

――これで……再び一点差。

 正式な試合ではない。
 デュースなどの取り決めはしていなかった。
 試合の状況は、依然として小島がリードで、次に一点を取られれば私の負けが決まるという厳しい状態には違いない。

――負けられない。

 その思いが……私の集中力を増幅する。
 ボールに意識を集中していく……そうするうちに周囲の雑音が消える。
 『ゾーン』と呼ばれる現象が始まった。
< 382 / 518 >

この作品をシェア

pagetop