28才の初恋

7-9

 抗議の声を上げる隙も無く、小島が私の方へササッと寄って来て、耳打ちしてきた。

「課長ぉ、早くここから移動しましょ」

 勝負のあっけない幕切れに、周囲のギャラリーが私たちをジーッと見ている。
 確かに……何かを話す雰囲気ではない。

 何か誤魔化されてしまったような気分ではあるが――とにかく卓球場から移動だ!
 しかし、勝負に負けたということは……やっぱり小島と大樹クンの関係については聞き出せないのか?

 そんなことを考えながら、卓球場を抜けてロビー近くの自動販売機コーナーに移動する。
 そこには黒い革張りのベンチがあり、小島に勧められるままに私はそこに腰を降ろした。

「ジュース買ってきますねぇ、課長ぉもノドが渇いたでしょ?」

 小島がジュースを買っている間、その背中をジーッと眺めてみる。
 何だか……凄い敗北感に襲われる。
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