28才の初恋

7-10

　露天風呂は旅館から見て、一段高い丘陵部にあり、神怒川を一望できる場所にあった。
　良い景色に良いお湯で、後はこれに日本酒でもあれば完璧なんだけど。

　まあ、急遽入ることにした露天風呂でありそんな贅沢も言えない。
　夜に予定されている宴会が終われば日本酒を持ち込んで呑むのも悪くないだろう、この場はそう考えて呑みたい気持ちをグッと我慢する。

「宴会でもぉ、池田くんの隣に座らないとダメですよぉ」

　先ほどの話を蒸し返すように、小島が私にアドバイスしてくる。
　いや、そうしたいのはヤマヤマなのだけど……大樹クンの方から私を避けているようで。

　小島は私のそんな気持ちを表情から悟ったようで、「そうやって引っ込み思案になるのがダメなんですよぉ」と軽く指導を入れてくる。
　だって、こういうちゃんと気持ちがときめくような恋愛って初めてで……どうすれば良いのか全く分からないんだもん。

……まったく、どっちが年上なんだか。
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表紙・目次

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