28才の初恋
 いや、でも、まさかきーちゃんがこんな所に……と、思い直す。

 電車で二時間以上かかるような場所なのだ。
 しかも、夏場にクーラーの効いた部屋をわざわざ抜け出して……こんな場所まで来るとは考え難い。

――ひょっとして、きーちゃんと同種類の生き物?

 と、思ったのだが……きーちゃん以外にこんな生物が存在しているとは思えない。
 何せ、私の家のキッチンから原因不明で発生したようなモノだからねえ。

「な、何でしょう? あれぇ……」
「だ、大丈夫。とりあえず、先に逃げて」

 怯えている師匠に、私のペットと気付かれないように露天風呂から出るように指示を出す。

 そそくさと、湯船から上がり脱衣所に消えていく小島。それを確認して、きーちゃんと思しき紫の物体に近付いてみる。

――やっぱり、きーちゃんなのかな?
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