28才の初恋

7-11

 宴会場は広く、中は三十畳ほどはある。
 営業二課で人数が約二十人いるが、充分な広さである。

 旅行社の担当である広田さん、頑張ってくれたようだ。よくぞあの金額でこんな部屋を用意できるものだ……旅行直前に会った時、大分擦り減ったような顔をしていた理由が分かるような気がする。

 部屋の中には既にお膳が並べられ、宴会を始める準備は整っているのだが――私はまだ席に着いていない。

 小島流小悪魔式恋愛術、その二十七条だ。

『合コンでは好きな男の子が座るまで、自分は絶対に座っちゃダメだぞ! 男の子が座ったらさりげなく隣をキープしちゃおう!!』

 これを守るために、大樹クンがこの宴会場に来てどこかの席に座るのを待っているのだ。

 この宴会で大樹クンを落とすために、時間ギリギリまで師匠から教えを学んだのだ。

――ヤルよ!アタイ頑張るからっ!!
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