28才の初恋
 決意を固めて、一気に料理を食べていたのだが……席を立てるようになったのはそれから一時間近くも経ってからだった。

 いや、私の前にある料理はキチンと食べたのだ。なのに、食べきると同時に橋本が仲居さんに私の分のオカワリを頼む。
 残すと勿体ないから私はオカワリも平らげる。
 で、また橋本が追加を頼む。

 それを繰り返してる間に課のみんなが私に次々とお酒を注ぎに来て。
 せっかく注いでくれたのだから、と思って飲む。
 で、飲み干したと思ったら次の人間が注ぎに来る。

 でも、大樹クンは注ぎに来ない。
 座敷の対角線上で隣の磯野に何か説教されている。どうにも動けなさそうな感じだ。

 ならば私の方から攻めるしかないと思うが、誰かが酒を注ぎに来てまたも動けない。

 宴会場に居るほぼ全員の人間から酒を注がれて、それを飲み干す頃には一時間経っていた――という訳だ。
< 407 / 518 >

この作品をシェア

pagetop