28才の初恋
 私が近寄ることに成功した時、大樹クンは既にかなり飲まされているような状態だった。

 飲ませた犯人は――私の背後で、何者かによって鈍器のようなもので殴られて失神している磯野である。
 きっと凶器はビール瓶だと推測されるが、何せ目撃情報が無い。
 磯野を失神させた犯人の特定は難しく、事件の迷宮入りは確実だと思われる。

「あれぇ? 課長じゃないれすか」

 隣に座った私に、大樹クンが気付いたようだ。
 だが、隣に座ればコチラのものである。
 避けようとしても、宴会場の中では逃げ場はない。

 やっと、やっと大樹クンが私を避けていた理由を聞きだせる!
 しかし、大樹クンにこれ以上お酒を飲ませても良いものか……?
 既にかなり出来上がってしまっているようで、これ以上飲ませると以前の二の舞になりそうな雰囲気なのだが……。
 
 まあ、とりあえず注いでみよう。
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