28才の初恋
「いないんですよー。誰か良い人いませんかね?」

 爽やかな大樹くんの声が私の脳内にまで響く。いない?いないって言ったよね?
 決して私の聞き違いじゃないよね!?

 思いっきりガッツポーズをして……それからこの場所が路上であることを思い出した。

「課長……どうかされました?」

 う……心配そうに橋本が私の顔を覗き込んでいる。どうやってこの状況を切り抜ければ良いだろうか……?
とりあえず突き上げた拳を下ろして……と。
 橋本の質問に答える。

「こ、これが『上段突き』の手本なのよ!」
 
 うん、誤魔化せてないのは自分でも分かる。
< 42 / 518 >

この作品をシェア

pagetop