28才の初恋
――誰かな?

 そう思いながら、脱衣所にいる人影を見つめる。
 小島の目が覚めて、露天風呂に来たのかな、と思ったのだが、どうやら違う人のようだ。
 小島にしては背が高いし、体型もややがっちりしているように見える。

 露天風呂は女性の利用時間だから男の人ではないようだし――私たち以外にも女性の宿泊客が居たのだろう。

 まあ、貸し切りではないのだから、他の利用客だって入ってくるだろう。
 そう思い、脱衣所から目を離す。

 湯船の中でボンヤリとしながら、先ほどの宴会のことを思い出す。

 嫌われていると思い込んでしまっていたが……まさか大樹クンが私に好意を本当に寄せてくれていたとは。

――ニヤける顔が止まらない。

 明日の朝、大樹クンと私の方がマトモに顔を合わせることができるか心配なくらいだ。
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