28才の初恋
「い、池田クンもこの時間にお風呂に入るなんて……温泉好きなの?」

 動揺を隠すために、世間話を振ってみる。
 ちょっとでも興奮を収めることが出来れば、自分のノボせそうになっているのも抑えることが出来るかな……と。

 横に居る大樹クンも、きっと動揺しているのだろう。先ほどからしきりに自分の肩にお湯をかける動作を繰り返しているのが見える。

「あ、いや。磯野さんが『酔い覚ましに入って来い』って」

 自分が露天風呂に来た理由を簡単に説明してくれる大樹クン。
 くう……まさか磯野にこんなところで反撃を喰らうなんて……!
 七割の呪いの気持ちと、三割の感謝の気持ちである。

 まあ、磯野に関しては明日アメをあげてから思い切り、腫れ上がる程度に足でも踏んでおこう。

……と、そんなことを考えている場合じゃなくて。どうやってお風呂から上がろうか……。
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