28才の初恋

7-16

「あ、課長。おはようございます」

 私の心配は、どうやら取り越し苦労に終わってくれたようで。
 旅館のチェックアウト時の集合では、大樹クンの方から声を掛けて来てくれた。

 だが、私の方が大樹クンの顔を見た瞬間に赤面してしまった。
 それは……昨日の夜のことを思い出してしまったからだ。
 一気に顔面に血液が上がってくるのが分かって、耳の辺りまで熱くなっているのが自覚できる。

 しかし、恥ずかしがっている場合ではない。
 大樹クンに、昨日の行動のお詫びをして、誰にも話さないでいてくれたことを含めてお礼を言っておかなければ……!
 大樹クンに耳打ちしながら、そっと告げる。

「あの……昨日、いきなりあんなことして……ゴメンね。それと……色々と……ありがとう」

……本当に、思い出すだけでも恥ずかしい。
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