28才の初恋
 それから十五分ほど、部長との雑談が始まった。

 「最近話題の『ベリーズ・ブート・ダンス』を始めてみたんだ、アレ三十分もやると汗ダクだねー」、とか「念願の白い『タマゴ野郎』を手に入れたんだよー」とか、「こないだ、若い子といったカラオケで『お腹舐めまくりムシ』を歌ったら大ウケでねー」とか。

 若い私に合わせて話題を作ってくれているようなのだが……どれもこれも微妙に鮮度が悪くなってしまったモノばかりで、聞いている私としても「はあ」とか「へー」くらいの返事しか出来ない。

 どうにも、私を呼び出した本題は、電話をかけた人物がこの場所に来るまで始められない類のものであるようだ。

 その相手は、はたして取引先の誰かなのか?それともウチの会社の誰かなのか?
 どちらにせよ仕事の話であることは間違いないようだ。

――夏休みが潰れないことを祈るのみである。
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