28才の初恋
「そうだな。今すぐに返事、というのは難しかったな。丁度、明後日から夏季休暇に入る。その間にゆっくりと考えてくれるかな?」

 そうやって、ひとまずの返答期限を区切ってくる。
 曖昧に頷くしか出来ない私に、専務はさらに続ける。

「詳しいことは、渡した書類に書いてある。分からなかったら私でも海野くんでも、いつでも電話でも直接でも良いから聞いてくれ。十月には設立準備に入りたくてね。急かせてすまないが出来るだけ早急に返答が欲しいんだ」

 そう言った後、専務は自分の腕時計をチラっと見る。
 どれぐらいの時間、この話をしていたのか私には分かっていなかったが、専務は話を切り上げないといけない時間が差し迫っているようだ。

「それじゃあ、今回のところはこの辺で。良い返事を期待しているよ」

 そう言いながら、私に握手を求める。
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