28才の初恋
 書類を一通り眺めるが、すぐにそれを閉じて通常の仕事に戻る。
 これを眺めてみても悩みが増えるだけ、そう感じたからだ。

 私にとってもかなり魅力的な話だとは思うのだ。
 お金が全て、というわけでもないが。それでも収入が増えればやりたかったことも出来るようになる。
 高級レストランで全メニューの一気食いとか、夢だった自宅でスッポン養殖なんていうのも可能になるかもしれない。

 仕事にしても、自分が部長となれば出来ることは今よりも格段に増えることだろう。
 現在の課長という立場と比較しても、部長という役職はどんな会社であろうと裁量範囲が広い。
 そりゃあ、それなりの責任だって伴ってくるだろうが、やりがいだってそれに比較して大きくなる。

 今の会社に残ったとして、もしも部長まで出世するとしたら、次長補佐、次長、部長補佐になってから副部長、それでやっと部長。
 どう考えてもあと二十五年はかかるだろう。
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