28才の初恋
 きーちゃんを連れて、京都市内まで出掛ける。
 学生時代によく散歩した鴨川のほとりを歩いてみれば、少しは考えもまとまるだろうか?――そんな考えである。

 夕方の鴨川は、私が学生だった頃とまるで変わらない。
 静かに流れる、少しだけ濁った川。
 その河川敷には、まるで等間隔に設置されたモニュメントのようにカップルが並んで座っている。

 昔から全然変わらない鴨川の風物詩のようなものだ。

――こっちは仕事と恋愛の板挟みで悩んでるってのに……コイツらは!

 うん、完全にヤツ当たりだということは理解している。
 ただ、理解しているということと、自分の中に芽生えた衝動を制御するというのはまるで別なことなわけで。

――行け!!きーちゃん!!

 鴨川に、カップルの悲鳴がこだました。
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