28才の初恋
 私が高校生の頃、こんな噂話があった。

『梅田のバッグマンの前で、本当に会いたい人を待つと、約束が無くてもその人を呼び寄せる』

 当時の私は、そんな噂話を『そんな非科学的なことが起こるわけないじゃない』とバッサリと斬り捨ててしまった。
 なのに、今の私は……そんな噂話にすがろうとしている。

 『梅田で待っている』とだけ記したメール。
 ただでさえ広い梅田という街で、そこで待っていれば――大樹クンが来てくれるような気がしたのだ。

 そんな何の保障もないような待ち合わせ場所に、なぜか分からないような期待を胸に私は梅田へ向かう。

 結果はどうなるのか分からない。
 でも、これで……こんな曖昧な誘いで。
 もしも大樹クンが待ち合わせ場所に来てくれるのならば――私は前に進めるような気がするのだ。

 運命というものが存在するのならば――。
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