28才の初恋
「あれ? 課長じゃないですか」

 キュウキュウに押し潰されそうになって、恐らくもうちょっと圧力が掛かれば口から内臓が飛び出すだろう、そう思いながら喘ぐ私の背後から……耳を疑うような声が聞こえた!

――これは……この声は!!

 スグに確かめたいのだが、隣に立っているメタボなオジさんの肉の壁に阻まれて身体が動かない!私の脳髄をとろけさせる声が耳に届いたというのに……意地で首を捻る。

「い、池田クン……この電車なの?」

 思い切り捻じ曲げた視線の先に――私の王子様、大樹クンが満員電車の中でも爽やかに立っている。
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