28才の初恋
 梅田の地下街にあるイタリア料理店『パクリチョーザ』に入り、注文を済ませる。
 お盆用の特別メニューというのがあり、メニューに記載された『二人~三人前』という文字を信用してそれを注文する。

――酔った勢いで告白はしたくない。

 そう思いソフトドリンクを注文した私を見て、大樹クンも何かを勘付いてくれたように同じくソフトドリンクを注文してくれた。

 本当に、以前から付き合っていた恋人同士のように――あえて何かを言わなくても全てが自然な流れによって進んでいるように感じる。

 それは、まるで私が自分の気持ちに素直になったことによって、全ての歯車が噛みあったような現象だった。

 和やかな空気に包まれて、二人きりの夕食は進む。私が話すことを大樹クンが微笑みながら聞いて、大樹クンの話を私は心から楽しく聞いている。

――もう、後はお互いの気持ちを確かめるだけになっているのだ。
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