28才の初恋
「う、うん。大丈夫だから」

 多少の肉体的な苦しさはあるが、大樹クンの顔を朝イチから見れるのだ。
 首が痛いなんて感覚は確実に麻痺している。

 ……が、さすがに苦しいので首を元の方向に戻す。心の中で血の涙を滝のように流す。
 こんな時のために……これからヨガを始めようと心に固く誓う。

 首が元の方向に戻ったため、大樹クンの顔を見れなくなってしまったが……それでも諦めきれない。
 背中越しでも大樹クンとの会話を続行する。

「――この電車で出勤してるんだ?」

 私はこの車両に毎朝乗っているが、今まで大樹クンに会ったことが無かったんだけど。
 大樹クンの通勤時間を探って、これからそれに合わせようとか……少ししか思ってないんだからねっ!
< 52 / 518 >

この作品をシェア

pagetop