28才の初恋

2-2

『エー、列車、間もなくカーブにさしかかります。車内のお客様は充分にご注意ください』

 不意に電車内にアナウンスが響く。
 そのアナウンスを聞いて、出来るだけ地面に着いた脚に力を込める。

 満員電車の中で、毎朝このカーブに差し掛かると体重の軽い私は吹っ飛ばされそうになる。
 しかし、今日は……大樹クンの隣に居るのだ。
 一ミリたりともこの場から動きたくない!

 いや、別に『好きな人の傍に居たいの』とかいう乙女ちっくな感情だけが理由ではない。
 上司として、通勤の時間を利用してアドバイスしてあげよう、という思いだってちゃんとあるのだ。
 
――忙しいビジネスマンなのだ、こういう僅かな時間でも無駄にはしないよ。
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