28才の初恋
「は、早く血を止めましょうよっ!」

 大樹クンがやたらと焦っている。
 確かに、私の鼻からはまだボダボダと鼻血が溢れ出している。
 さっきの密着してた興奮がまだ冷めていないからであろう、我ながら本当に素直な身体だ。
 
「そ、そうね」

 まずは、この興奮を収めないと……。
 大きく深呼吸して……。
 精神を鎮めて――。

「ちょ! なんでジッとしてるんですか!? ティッシュ! ティッシュをっ!」

 大樹クンが慌てて自分のスーツからティッシュを取り出し、私に渡してきた。
 そうか、そういう物理的なアプローチもあったね。

――できれば……このティッシュを一枚も使わずにコレクションの一部に加えたいところではあるが……大樹クンが目の前にいる手前、それも出来ない。非常に残念だ。
< 64 / 518 >

この作品をシェア

pagetop