28才の初恋
「スイマセン、今日は俺のせいで残業になってしまって」

 並んで歩いていると、いきなり大樹クンが謝ってきた。が、謝られることではない。
 むしろ二人きりでオフィスに残れたわけだし、『残業万歳!!』と心の中で叫びたいくらいだったのだから。

 そりゃあ、オフィスでの妄想の通りにコトが運べばさらに喜ばしいことだったが……まあ、それは今晩の家に帰ってから悶える時間に利用させてもらおう。
 さておき、大樹クンの罪悪感を打ち消しておかなければ。残業することなど、何も苦にはならないのだから。

「し、仕事だからね! アンタのためじゃないんだから!!」

――神様、私を素直な子にしてください……。
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