28才の初恋
 声を裏返らせてしまった私に、背後からの驚いたような空気が伝わってくる。

 自分で言うのもアレだが。
 常に冷静沈着、『クールな雰囲気を持つ女』、というイメージを周囲に定着させてきた私にとって、初対面だからといって緊張して声を裏返してしまうなんて……本当に私はどうなってしまったのだろうか?

 気を取り直して、王子様……じゃなくて。
 目の前に立つ、このイケてる新人クンに課の長として威厳のある一声をかけなければ。

 私の三歩先、手を伸ばせば抱きしめることさえ可能な距離で私の一言を待っている池田くん。
 目をパチパチと、切れ長の瞳でまばたきなんかしちゃったりして……。
 そんな瞳で私をじっと見つめているわけで。

 か、可愛い……持ち帰ってしまいたい。
 そのまま家に持って帰って良いかな!?ちゃんと自分でお世話するからさっ!!
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