28才の初恋
「私は大丈夫よぉ……」

 手をヒラヒラと振りながら、心配そうに私を見る橋本にそう答える。
 まだ少し酔いは残っているが、それでも自力でタクシー乗り場にたどり着くことくらいならば可能だ。

 周りを見ると、いつの間にか小島も会計を終えて店の前に出てきている。
 宴会場に居た面子も、何人かは顔が見えない。酔いが浅かった者から、順次解散しているようだ。

 この『流れ集合、流れ解散』もいつものことだ。
 集まって酒を飲むのが楽しい、そういう人種がウチの課には多いようだ。

 ふと橋本の方に視線を遣ると、小島と何か話し合っている。二次会の相談でもしているのだろうか?
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