アプリーレ京町、へようこそ

３ オトナリサン

「...っ...ふあーっ...うぅー...」
両手を伸ばすと大きなあくびがでた。
昨日は半日歩き回ったり少し片付けもしたせいで思ったより疲れてぐっすり寝てしまった。
やっぱり一人暮らしはいい...。
誰に気兼ねすることなく朝寝坊できるし、しても怒られないし。
「さいこー...」
春のポカポカ陽気が窓から差し込んでいて、俺はもうひと眠りでもしようかと再度布団に倒れこむ。
「んんー...」
(あったかい...)
これが、まどろみってやつか...。
......

ピンポーン！

「のわっふ！！？」
素敵なまどろみに引きずりこまれそうになる寸前に俺は飛び起きた。
「は、もう誰だよーまだこんな時間...ってもう10時か...」
俺がここに引っ越してきたのなんてまだほとんど知られてないから...管理人さんとか？
俺は昨日の早川さんを思い浮かべながら駆け足で玄関に向かう。
ああ、なんか寝すぎたかな。ちょっとだるい気もする。
「はいはい、今開けます...っ」
普通のTシャツにスウェットだけど、いっか。男同士だし。
がちゃ、とドアを開けるとーー
「...ぁ」
「？！」
そこに立っていたのは女の子だった。
「って待ってええええええ！！！」
バタン！！とドアを高速で閉じる、いや閉じようとしたそれは目の前の相手によって阻止された。ぐぎぎぎぎ、と音が鳴りそうなくらいの強さで再びドアをこじ開けようとする。え、え、何この人力強すぎじゃないのおおおお。
バンッ！
「.......」
ドアは全開にされた。
「.......」
「何でドア閉めるんですかっ？！」
ずい、とその人が体を乗り出してくる。
「...っ」
そこで俺はやっと頭が回ってきたらしい。つうか何でドア開けた瞬間に気がつかなかったんだろう。
そう、この馬鹿力の主はーーぱっと見女子高生とかそのへんだがーーえらく可愛いかったのだ。