気づけばキミと恋に落ちて
そっか…。宗ちゃんは、ずっと誰にも言えずに、一人で悩んでたんだね…。


「そんな時さ」
「え、宗ちゃんっ?」


長い腕が伸びてきて、わたしの手をキュ、と握った。


「はるちゃんが淹れてくれる珈琲、はるちゃんが一生懸命頑張ってる仕事、はるちゃんの笑顔に癒されてるオレがいて、ドンドン惹かれていったんだ」
「そう、ちゃん……」


恋愛経験、ほぼゼロに近いわたしは、なんて言っていいかわからず、ただ宗ちゃんを見つめることしかできなかった。


「だからって、はるちゃんを困らすようなことして…。ホント、ごめん。正しいことだとは、思ってないよ。まだオレは既婚者だし、立派な浮気になるからね。でも、気持ちだけはホントだから…」
「そ、んなこと…言われても…」


そんなこと、急に言われても困るよ…。


宗ちゃんの真剣な気持ちは、伝わった。


伝わったけど…。


「宗ちゃん…もう一度、奥さんと話し合ってみてはどうですか…?結婚…恋愛すら、まともにしたことがないわたしが言うのもおかしいけど、わたしはお子さんの話とかしてる宗ちゃんはステキなパパで、スゴくいいなって思ってました。だから、」
「はるちゃん。ありがとう。でも、もうたくさん話したんだよ。話し合って、お互いにムリだと思ったんだ…」
「そんな……」


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