気づけばキミと恋に落ちて
オトコは、わたしから鍵を奪うとズルズルとわたしを抱きかかえ、部屋のほうへと歩いて行く。


これは、わたしを部屋に送り届けるためなんかじゃない。


きっとオトコの部屋は六階じゃなくて、わたしの部屋で〝そういう行為〟をしようとしてるんだ…。


想像しただけで、吐き気がする。


そして、部屋の前に着いてオトコがニヤニヤしながら、鍵を差し込み回した。


(拓篤……怖い、怖いよ…)


心の中で、拓篤に助けを求めてギュ、と目を閉じた時だった。


「お客様っ」


きっと、あの電話で駆けつけてくれたんだ…。


電話に出たフロントの人は、女性だったけど、今来てくれたのは男性スタッフが二人。


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