気づけばキミと恋に落ちて
上の空です……
オトコ…拓篤は、軽く右手を上げると、わたしのアパートの前を通り過ぎて行った。


「…って、駅反対なのに」


呟くように言った声は、当然聞こえるはずもなく。


もしかしたら、コッチにも家があるのかも。


あ、オンナの人とこかな。ウン、きっとそうだ。


「やっぱり、ただのタラシじゃない」


まだ拓篤の背中が見える中、わたしは〝普通〟だと言われた自分のアパートへと帰った。


わたしのアパートは二階建てで、部屋は二階の角部屋。


拓篤が言った通り、普通のアパートだ。


六畳のリビングと六畳の寝室が一つ。


< 73 / 380 >

この作品をシェア

pagetop