好き、なんて。
第1章
「お、ミズキ。相変わらず面してんな」
「…橘、あんたこそ。その胡散臭い笑顔こっち向けないでよ、いつも言ってるでしょう?」
大学のカフェテリアにて。
私、水木汐里(ミズキシオリ)は、多分誰から見てもうんざりした顔をしていた。
なぜって?言うまでもない。
ばったり出くわした男が、いきなり憎たらしい言葉を投げかけてきたから。
この男---橘彰人(タチバナアキト)は、大学の同級生で、同じ法学部に所属している。現在、2回生。
「相変わらず威勢良いな。この笑顔、割と評判良いんだけど?」
「私は騙されませんから。女の子ホイホイ引っ掛けるのやめなよね」
「引っ掛けてないし。向こうから寄ってくるだけだろ」
「うわ、出たよ俺様。いつか刺されればいいのに」
「…可愛くねーな。」
「可愛さで売ってない。しかもあんた相手に」