好き、なんて。
2人の関係
私と橘は、出会った時からこんな感じだ。
入学してすぐの、新入生への説明会みたいなやつで。
開始ギリギリに教室に入ってきた私。
(あー、もうだいぶ席埋まっちゃってるな。知らない人の隣に座らなきゃか、仕方ない。)
大学って感じの、10人ぐらい座れる長机が敷き詰められた教室。
ひとつの長机、端の席は埋まっていたけど、その隣が1席空いていた。
端に座っている男の人に声を掛ける。
「あの、すみません。隣に座りたいんですけど、一旦立ってもらっていいですか?」
言いながら、彼の顔を見る。
(うわ、格好良い。ていうか大人っぽいな。こんなイケメンが同級生なのか。)
二重のきりっとした瞳に、すっきり通った鼻筋。短めの黒髪は軽くアシメにしてて。
誰が見てもイケメン、だと思う。
ほー、と見入ってると、彼が無言で立ち上がって、私が通るスペースを作ってくれた。
席に座って、また彼のほうを見る。
「ありがとうございます」
微笑みを浮かべ、そう言うと。
彼は一瞬固まったようになって、それから、口を開くと。
「お前…その顔、胡散臭いんだけど」
そう、言ってのけたのだ。
たぶん私は、鳩に豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う。
これが、私と彼の出会い。
最悪の出会い、である。