働き者の彼女は臆病者
この電話をきっかけに拓巳からのアプローチは顕著になった。
メールはもちろん、何かと電話がかかってくる事も増えた。
それでも、多恵はそれが拓巳からのアプローチだとは気づかなかった。
拓巳とやっと友達として距離が縮まったものだと。
大人しく、あまり心を開いてない印象が強かった拓巳が
自分に心を開いてくれたのだと。
多恵はそう思って、なんだか嬉しくて拓巳と連絡を取っていた。

「あーもう分かんない!!」
そんなある日、高校に入って始めて学んだ化学に苦戦していた多恵は、
咄嗟に拓巳に
『来週、化学のテストあるのに本当化学が出来ない!もーどーしよー(泣)』
とメールした。
すると拓巳は、
『俺、得意だから教えてあげるよ!今週末、家行こうか?』
と返してきた。
多恵は、
『なんていい奴!いい友達を持ったもんだー!』
と感動して、
『本当に!?すごい助かる!けど、わざわざ来てもらっていいの!?』
と返した。
拓巳は、
『久しぶりに相田先生にも会いたいし、全然いいよ』
と返事を即座にくれた。


実は、多恵の母親は小学校の先生で、
拓巳は多恵の母親の教え子でもあるのだ。
『あ!そっか!そーだね!うちのお母さんも喜ぶよ!おいで、おいで!』
多恵は、そう返すと即座に二階の自分の部屋から母親のいるリビングに降りてその事を告げた。

「お母さん!今週末、拓ちゃんがうちに来るから!」
「え?拓ちゃん?拓ちゃんが?なんでうちに??」
状況を全く把握しきれてない母に、多恵はなぜそうなったかを説明する。
「それより、あんた、拓ちゃんとそんなに仲良かったの??珍しい組み合わせね。
あの大人しくて真面目な拓ちゃんが、あんたとねぇ〜。」

どうやら、全く別のタイプ同士の教え子と我が子が
自分の知らないところで仲良くなっていた事に母は不思議そうだ。

それもそうだ。
多恵自身もそう思うのだから。
ただ、拓巳は自分が今まで思っていた拓巳とは違った。
そう思うからこそ、拓巳が勉強を教えに家まで来てくれることを
受け入れることが出来るのだ。
ただ少し胸がザワザワする。
いつものノリで
「おいでー!」
なんて言ったものの、いざ来るとなると…。
そういえば、卒業して以来会うのは初めて。
あの頃接して居た拓巳とは違う拓巳。
多恵は、少し動揺していた。
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