鬼上司と私のヒミツの関係
「森本か……」
部長はため息をつき、呆れたような顔をする。
本当は私が作った書類だって分かっているクセに……と思っていても絶対表情にも口にも出さない。
私にはそんな度胸は持ち合わせていない。
「金額の欄がおかしい。数量と単価をよく見て入力したのか?お前、三年目だろ。こんな初歩的なミス、新入社員だってやらないぞ。お前の脳ミソは空っぽなのか?いい加減しっかりしろよ。今すぐやり直せ。十五分以内だからな」
畳み掛けるように言われ、しかも制限時間まで決められたあと、書類をポイッと投げられた。
若干、半泣きになりながら書類がヒラヒラと床に落ちていくのを目で追った。
そりゃ、単純な間違いをした私も悪いけど、脳ミソ空っぽまで言わなくてもいいのに。
この鬼部長!
「お前らもじっと見てる暇があったらさっさと仕事しろ」
部長の睨みと怒鳴り声を合図に、それまで静まり返っていたフロア全体が動きを取り戻した。
受話器を取り、電話したりとザワザワし出す。
私は床に散らばった書類を拾い集め、お辞儀をして自分の席に戻った。