鬼上司と私のヒミツの関係
*****
「……ちゃん。ねぇ、響ちゃんどうしたの?ボーッとして、何か考え事?」
沙耶が心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ん、ちょっと思い出してたんだ」
「何を?」
沙耶はリビングのラグの上に座ってる俺の足の間に入り込み身体を預けてきた。
風呂から出てきたばかりの沙耶の身体はポカポカと温かい。
愛しい重みを腕の中に閉じ込め、髪の毛に唇を押し当てる。
「沙耶と出会った頃のこと」
「あー、あの頃か。私、ミスばかりしてたよね。今もたまにしてるけど」
苦笑いしながら俺の手に指を絡めてくる。
最初は沙耶と結婚するなんて想像もしてなかったけど、人生何が起こるか分からない。
「沙耶のうっかりがなかなか直らないのは困ったもんだ。だいぶ減ってはきてるけど。可愛い奥さんを目の前に声を荒げるのは心が痛いが、公私混同は出来ないからな」
「分かってるよ。それに響ちゃんは“鬼部長サマ”だもんね。でも響ちゃんに“森本”って呼ばれるたびにドキドキする。ミスした時なんて身体が震えるからね」
楽しそうに笑う。
全く、笑ってる場合じゃないんだぞ。