鬼上司と私のヒミツの関係
ベッドへ沙耶を寝かせると、抵抗することなく俺を見上げてくる。
「ここなら、いいだろ?」
俺が聞くと頬を桃色に染めてコクンと頷き、視線を逸らす。
こういうところが可愛くて仕方ない。
あの車内での告白がなかったら、俺たちは一緒にいることはなかった。
当時の俺は、あまりにも必死過ぎて思い出すと苦笑いしてしまう。
自分から食事に誘ったのも初めてだし、自分から告白したのだって初めてだった。
それだけ、どうしても手に入れたかった愛しい存在。
こうして沙耶が俺の腕の中にいると思うだけで幸せに包まれる。
沙耶のことになると余裕なんてこれっぽっちもなくなる。
給湯室で小野と二人きりで話していたのを見ただけで嫉妬してしまうほどに。
俺は早く結婚していることを公表したかったが、沙耶が渋った。
『私なんかが響ちゃんと結婚してると知られたら迷惑がかかる』の一点張りで。
いつも沙耶は“私なんか”と自分を卑下する。
何度も『そんなことはない』と言っているのに。
だが、沙耶の嫌がることはしたくなかったので従っていた。
結局、俺は沙耶に弱いんだ。